札幌から西に約50キロ、 積丹半島のつけ根に位置する 「余市」。
春から夏には花の香りが、秋には果実の香りが漂う町です。
開拓時代、アメリカ産のりんごの苗木を持ち帰った黒田清隆北海道開拓長官が全道に配布し、花を咲かせ見事に実らせたのが余市でした。実ったりんごは、札幌などの市場で高値で取引されるようになり、りんご栽培をはじめる人が増えました。『登郷土誌』によると、登地区では明治20年頃から1haほどにりんごが植えられており、以降順調に面積は拡大して、同30~35年頃には相当の作付面積があったそうです。こうして、厳しい寒さにも耐えうる品種の選定や栽培技術の確立など、試行錯誤を重ねながらりんご栽培に取り組んできました。近年では新たな品種の開発や、高糖度で風味豊かなりんごの生産に力を入れています。余市町のフルーツが美味しく育つ理由は、その恵まれた自然環境にあります。北海道内でも温暖な気候の余市は、昼間の温度は高く、夜は冷え込みます。昼夜の温度差が大きいことが、 果汁に甘みと酸味の絶妙なバランスをもたらします。そして海から運ばれた栄養豊富な土壌が、果樹の生長を力強く支えているのです。果樹栽培に適した余市では、いちご、 プラム、ブルーベリー、サクランボ、プルーン、もも、ぶどう、なし、りんごなど、 種類豊富な果実を出荷しています。 果実とともに野菜の栽培も充実し、 種類の多さでは全国でも類をみません。
さくらんぼの果皮は雨に弱く、色よくおいしく熟するために陽光をたっぷり浴びる必要があります。余市は梅雨がないので雨が少なく、好天続きで日中暖かく夜は涼しいという、さくらんぼを育てるための好条件がすべてそろっています。その中から生まれたさくらんぼは最高級の品質を誇っています。
プルーンには健康に欠かせない、ミネラルや栄養素がたくさん含まれています。 肩凝りや食欲増進、疲労回復などの効果があります。 また鉄分も多いので、貧血気味の人には嬉しい果物です。 出荷時期は、 8~10月にかけ10品種以上のプルーンが味わえます。生食の他ジャム等でも楽しめます。
余市での梨の栽培は古く、中でも「千両梨」は、 明治中頃 に東洋梨の実生から生まれた余市独特の品種です。 また余市では洋梨の栽培が増えています。 洋梨はメロンと同様に収穫してすぐには食べられません。 しばらく貯蔵庫で貯蔵した後、追熟して柔らかくなって香りが出てからが食べ頃となります。
秋の味覚で知られる余市町のぶどうは、数種類に及ぶ品種が栽培されています。余市の気候風土が果樹栽培に適しているため、生食用としてのみならず、ワイン用に適する醸造用専用ぶどうも栽培し、余市の果樹の中ではぶどうが一番の生産量となっています。ハウスぶどう栽培は北海道認証のイエスクリーン栽培に取り組んでおります。
これらのフルーツは、地元の観光農園や直売所で新鮮な状態で購入できるほか、加工品としても人気があります。ジャムやジュースだけでなく、ゼリー、ドライフルーツ、お菓子など、バラエティーに富んだ魅力ある商品にあふれています。
北海道内でも比較的温暖な気候のまち、日本海が眼前に広がり、ゆるやかな丘に連なる畑には、みずみずしい果実が豊かに実り、
それらは「余市ブランド」として確立され、道内外で高い評価を受けています。この評価は、生産者たちの努力と地域全体での取り組みの結果であり、余市町の誇りとなっています。